「僕にも紹介してよ、ね? いいでしょ?」



犬耳が付いてる…。

ノアの犬バージョンみたいな…。


何か違和感を覚える。

あれだ、あの目だ。あの目の奥、見透かそうとすればするほど、背筋がヒヤッとする。

ノアとはまた違った闇深さだ。



「ねぇ、聞いてるの?」


「うるせぇよ」


「全くもう~っ。やっと口を開いたかと思えば、うるせー!って~」



口を尖らせて、ノアの口調を真似をしている。


そんな姿を見てたら、警戒心も薄れるというか…。

だめだめ風音。人は簡単に信じてはいけないの!


ふと記憶が脳内に蘇った。


あれっ、私、何でノアのこと信じちゃってるの……?

あれほど、信じることに抵抗があったのに。


何でだろ……。



「ノアくんのは嘘だね。絶対いるよ、みんな匂い覚えてるんだから」



大胆不敵に笑う犬人間は昼間に現れた、闇夜のような姿だと思った。



「勝手にお家を漁らせてもらうよ? ごめんねノアくん」



うるっとした可愛い目をしてノアの返事も聞かず、犬たちに行ってきてねーと指示をした。


その合図でノアの家は戦場と化した。


押し寄せる犬たちに猫は威嚇し、引っ掻く。

けれども、犬たちの方が圧倒的に強いのだ。大きさから何もかも。


吹き飛ばされて、苦しそうに悶える猫たちを見て恐怖で足がすくんだ。



キャァン


クゥーン



犬の悲鳴が鮮明に聞こえた。



「俺に触るなと何度言ったらわかるんだ」



色んな怒りが溢れてノアは犬を蹴りあげたみたい。


だけど、それにしてはやりすぎだよ…!


蹴った犬に近づいて、また足を振り上げようとしていた。


ノアを止めなきゃ。


考えるよりも体が先に動いていた。



「に、にゃぁあん!!」



えっ……?



「にゃ、ぁ…?」



猫語!?!?!?


この場に異様な空気が流れた。


私は驚きでたまらないし、犬人間はきょとんとしてるし、犬たちはこちらをジッと見てくるし……。


色んな感情が押し寄せてきて泣きそうになった。



「……あの子が怪しいね、連れてきてよ」



猫の声ならそこら中飛び交っていたのに、私の声でこんな空気になるなんて…!


というか、自分より二回り大きい犬たちに囲まれて、そろそろ限界がきちゃう。

猫が守ってくれてるけど、私は無能すぎて足手まといになってる…。


泣きたい。泣いて叫びたい。私が何でこんな目に遭ってるのかって。



私に触らないでよっ!!って叫んだつもりだった。



「シャー!!」



違うの、これは違うのよ…。

威嚇してるみたいじゃん…。いや威嚇してる類なんだけど、何でこうなんだろう。


もう半泣き。

でも何か逆に笑えてくる。


私って本当にいけない性格してるなって思う。


みんなに守ってもらわなくても私は大丈夫だったでしょ。

こんなことで悩んでたって今はどうしようもないことじゃん。


なら、逃げよう。誰も来れない自分を守れるところへ。