もふもふ耳には危険あり!






「じゃあ必要だったってどういうこと?」


「それは……言えない」


「なんで?」


「酷いから」



苦虫をかみつぶしたような顔をして、目を宙に泳がせていた。



「どんな風に?」


「言えるかよ、あんなにも残酷なのは見たことがない」



ノアがそういうなら本当にとても酷いことなんだと思う。



「全然理解できないんだけど、何で私なの?別に他の人でも良いのに」


「あー、元々お前の先祖は巫女としてこの世界に生まれた」



巫女…?そんなファンタジーな話ある?



「始まりの巫女は、癒しの神力を神から一欠片ほどいただいていた」


「ひと、欠片…?」



少なくない?



「少ないって思っただろ。その頃は、力をもたぬ者ばかりで、一欠片でも偉大な力だったんだ」



ただし、と続ける。



「その力は偉大であっても、小さかった。治せる傷は火傷まで、大きな怪我は治すことができなかった」



何となく察した。



「深い傷を負っている人々の苦しむ姿を見て嘆くも、始まりの巫女は自我を失わずに自分の責務を全うして最期まで生きた」



すごいと思う。

私だったら耐えられない。



「始まりの巫女は『エステル』という名だった気がする」


「エステル…」



どこの国か忘れたけど、星って意味だったっけ…。



「次の巫女の名は『千姫』と呼ばれた。彼女は墨のような真っ黒な髪に漆黒の瞳をもち、予言をしていた」



ノアが私の目と髪など、チラリと確認してくる。


……私と同じだからか…。



「その予言はほとんど当たっていた。千姫は自らの死を予言したが、その予言は外れた。千姫は突如亡くなってしまったんだ」


「えっ……」


「俺の考えだが、自分の死を知ってしまったから、予言通りにはいかなかったんだと思う」


つまり、自分の死は知らない方が良い……。


仮に私が巫女としてここにいるなら、私は予言者の可能性が高いのかも…。

同じ外見で、一応巫女だから……。


何か怖くなってきた。

窓のない家に住んでるみたい。



「次の巫女は名前は残っていない。彼女は歌姫だった」


「歌を歌ってたの?」


「あぁ。歌を歌って、自然を静めていた。彼女には雨を降らすこともできた」



歌姫…。


だが、と重みのある口調で続ける。



「歌姫は、巫女である責任の重さと批判されることに耐えられず、自身の半身である自然に囲まれ永遠に眠ったと聞いた」



何とも悲しい話。



「巫女はやはり、どの時代でも嫌われることは多い。だから自殺や暗殺された巫女も少なくはない」


「あ、暗殺……!?」


「だから気をつけろと言ったんだ」



呆れたように言いつつも、目は真剣だと言っていた。



「そうだったんだ……」



私は馬鹿だな…。



「え、じゃあ私は何代目の巫女なの?」