周りにいた猫たちは、警戒を解いて再び眠りについていた。
「み、三毛猫さん」
くりくりとした瞳で見つめられ、胸が高鳴るのが抑えられなかった。
「ノアが、起きるまで何をしたらいい…?」
切実にそう思った。
ノアも一応猫らしいようで、朝は弱いみたい。
「…にゃみ」
私に背を向けて顎でしゃくった。
付いてこい、ってことか…!
どこに行くのかな…?
「にゃにゃん」
「わぁ…!」
目の前に広がった光景に私のお腹は耐えられなかった。
ぐーきゅるるる
「わっ…」
一気に顔に熱が集まり、どうしようもない恥ずかしさが駆け巡る。
それを微笑むかのように三毛猫さんは優しく見ていた。
「に~!」
「これ、食べて良いの?」
三毛猫が頷く前に私はそれを口にした。
「んっ!? 美味しい…!」
口の中に水分が溢れ、さっぱりとした甘さが広がって、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しい!
腕いっぱいに抱えていた果物をあっという間に平らげてしまった。
何この果物園は…!
まさに……壮観。
三毛猫さんが連れてきてくれたこの場所は、果物のような実がなって色鮮やかに景色を彩っている。
「三毛猫さん。ありがとうー!」
「にゃ~!」
和んだ空間が一瞬にして歪むとは思ってもいなかった。
「おい」
「にゃ?」
淡い赤色の実をかき集めて眺めていたら、三毛猫さんの声が聞こえた。
その実を胸に抱き、三毛猫さんに駆け寄る。
「どうしたの?」
三毛猫からの様子を見るに、おかしなところは良くわからなかった。
なのに……。
「お前、ちゃんとわかってるのか!?」
怒鳴るような声が頭上から降ってきた。
「ん…?」
「身の危険がわからないのか?」
そうどこからか降ってきた姿に目を見張る。
「えっ…?」
何を言っているのかわからない。
その上、どこからやってきたのか不思議でたまらない。
さっきまで寝ていたはずなのに、目の前にいる人は狂ったように私を怒鳴っている。
「ノア……」
何でノアがここに…?
「ノ、ノア落ち着いて…?」
「風音が落ち着け。お前は正気か?」
「な、何でそんなこと聞くの…?」
ノアは今までで見たことないくらい冷たい瞳で私を見つめていた。
若干おどおどしながら、ジッと見つめ返していると全身が凍りそうなほどゾッとした。
ノアの瞳、色が、光が……ない。
彼の世界はモノクロだ……。
「とりあえず帰るぞ」
何も言えなかった。けど、大人しくノアの後ろを付いていった。
出遅れた三毛猫さんは駆け寄ってくると、怯えたように私にぴったりくっついて歩いた。
誰も一言も発さず、私は一人俯いた。



