彼女たちが去ったあと、私はトイレに駆け込み大きなため息をはいた。
なんで私ばかり……。
だめだめ。ネガティブになっちゃだめ!
頬を手のひらでぺしぺしと叩き、自分を奮い立たせる。
ただついてないだけ。
最近は何もかも上手くいってないだけだから。
……ただ私が不運なだけなんだ…。
母は全然家に帰ってこないし、父は不倫を繰り返して、最終的には家庭が崩壊。
それを知ったお調子者たちが私に心ない言葉をぶつけて、ストレス発散としている。
そんなの誰も幸せにならないというのに。
可哀想な人たち…。
視界の端では、左右反転した世界で同じ動作を真似る可愛げのない姿。
つやのあるストレートな黒髪に、色素の薄い薄桃色の瞳。
きっと、こんな異端な眼じゃなくても地味な私はいじめられたんだろうな……。
救いようのない自分に手の施しようがない。
「私は強いからきっと大丈夫」
“大丈夫”この言葉は不思議だ。
それだけで、心の中に1本の柱がかかったみたい。
周りの女子たちが私を遠巻きにみながら一瞥して、各教室へと早足に行った。
……大丈夫。きっといつかは救われる。この苦しみなんてそんなに長く続かない。
胸元できゅっと握っていた拳から何かを解放するかのように広げた。
報われることを信じて、いつの間にか止まっていた足を前へと踏み出した。