これからどうしよう…。
獣道を辿ってきたけど、辿り着いたのはあそこだった。
……あの獣道は、あそこに住んでいる者たちが何度も通ったから…?
そんなところを私は歩いてたの…!?
確信はないし証拠もないけど、また身震いをする。
「はあ……」
今まで抑えていたため息を吐いた。
丘があるはずの場所は、良くわからない変な土地だった。
だから、私の家はないだろう。
あんな事実を見せつけられたら、もう私には行く当てもない。
このまま死んでも、誰にも気付かれない。
私一人死んでもだれも悲しまない。
世界は回り続け、朝日は昇り続ける。
なら……。
そう目を閉じかけた。
耳から自然の動き、生命の源が脈々と流れているのが飛び込んでくる。
自然ってこんなにもうるさいんだ…。
どんなに雑音でもそれは生きている証拠。
ザシュッ……ザシュ、ザシュッ
この何者かが草木を嗅ぎ分けて進む音も…。
「…おい」
聞き覚えのある低くて心地良い声色。
これも、自然のもの…?
目を開き、“それ”を確認したとき、ここにいるはずのない者を見て動転した。
「えっ……何で、ここに…?」
びっくりしながら訊ねると、思いも寄らない返事が返ってきた。
「ここで死なれては困る」
当然のように淡々と発せられた言葉。
とても衝撃を受けた。
ここじゃなくて別のところでって意味?
「私別に死のうとかはしてませんでしたよ」
醜い言い訳に見えるが、悲しみに浸ってただけだ。
だとしても死んでもいい…って思考はやめた方がいいな。
もうあの頃とは違うんだから。
「帰るぞ」
「…はい?」
目が点になった。
言葉のキャッチボール…できてる?
「ご存知の通り、私にはどこにも帰る家なんてありません」
一度突き放された身からすれば今更…と、自然と冷たい態度になる。
こういうのって距離感じる…。
だけど、もう何もないんだから。
丘にいたときから手ぶらだったから何もできないし。
「…それでいいのか」
「…良いとは言ってません…。でも仕方ないんです」
「はぁ、付いてこい。あそこに帰るぞ」
ため息を吐かれた。
面倒くさいなら構わなければいいのに。
一体何を考えてるの…? 何で急に?
心変わりするとしても早すぎだし…。
考えが読めずに混乱するばかりで、目が回りそう。