「あいつよ」


「なんでここに来たのよ」


「“異端者”のくせに」



女子たちがひそひそと囁きあっているのが聞こえる。


あれ絶対わざと聞こえるように言ってるよね…。



「はぁ……」



憂鬱になって、ため息をはいた。



「なんなの、ため息ついて」


「同じ空気を吸いたくないわ」


「行きましょ」



ため息でこんなに言われるなんて…。


ここじゃ、気が休まらない。


そう思っても行く当てもなく、私は自分のクラスに行こうと足を進めた。


そんなとき……。



「いたわよ」



背後から聞き覚えのある声たちが聞こえ、私の足は反射的に止まってしまった。


出会いたくなかったのに……。

体が何かに縛られているかのように動かない。



「あなた、昨日学校休んだわね? おかげで中庭の掃除、私たちがすることになったじゃない」


「………」



彼女の言っている意味がわからなくて私は眉根を寄せた。


だって中庭の掃除は元々あなたたちの役割じゃない。

私は関係ない。



……なんて言っても、“また”押し付けられるのか…。



「ちょっとどこ見てるのよ!!」



怒鳴るような大きな声に身をすくめた。



「黙ってないで何か言ったらどうなの!」



怒鳴る彼女。


そんな彼女は「そんなんだからみんなから嫌われてるんでしょ」と、吐き捨てるように言い放った。


その言葉に反応してしまった私の眼には、彼女たちの怪訝そうな顔が映った。



「もし……」


「なによ。もうちょっとはっきり喋りなさいよ」



その一言一言が先の尖った矢のように突き刺さってくる。



「もし、ちゃんと喋ってちゃんと向き合っていたら、こんな目に遭わなかったと思いますか」



彼女といた人たちも黙りこくって、複雑な表情をしている。


そりゃあそうだよね。

だって答えはノーだから。



「……その忌々しい眼と態度をマシにすれば何か変わると思うわ」



ぼそりと呟いたあと、ばつが悪そうな顔をした。


そんなことをしても標的は変わらない。

そんなのは言い逃れに過ぎない。



それっきり彼女たちは気まずそうな顔で俯いたまま去っていった。



私はただ彼女たちを睨むほかなかった。