朝。小鳥のさえずりで目を覚ました。
カーテンに外の光が溜まっている。
時計を見ると6時半だった。
足元が冷たい。
毛布から出たくない。
学校行きたくないよー。
学校休みたいよー。
このまま一生寝ていたいよー。
......。
私は観念して頭元をまさぐり、リモコンを探す。
硬いものに手が手に当たる。
その瞬間、昨夜の出来事を思い出した。
「私、みーくんに酷いことしちゃったな」
私は昨日、みーくんに嫌なことを言われて手を挙げた。
何を言われたとしても、叩くのはよくなかったと思う。
「謝りたいな」
私は手のひらを見つめる。
私は学校の支度をして、家を出た。
岸野家の玄関をくぐった私は昨日、一昨日のように、食事を作り、みーくんとまーくんを起こした。
みーくんはやっぱり機嫌が悪い。
いつも寝起きは機嫌が悪いけど、今日はさらに悪い気がする。
謝るタイミングを探しつつも、まーくんといつものノリで会話をし場の空気を乗り越えた。
「ねここちゃん。兄貴となにかあった?」
みーくんがトイレで離れたとき、コーヒーカップを片手に持ったまーくんは私に言った。
「ううん、なんにもないよ」
私は笑顔を作って答える。
「そうなんだ。考えすぎかな」
まーくんはコーヒーをすすり、コーヒーカップを机に置く。
「なんか二人ともピリピリしてる気がしたから」
周りの人にわかるくらい嫌なオーラが出てたんだろうか。
笑顔を意識して、悟られないように気を付けてたのにな。
「そういうのわかるんだね」
「長い付き合いだからね。ねここちゃんのことなら何でもわかるよ」
まーくんはため息を吐く。
なんのため息だろう。
「どうせ兄貴がなんか言ったんでしょ?」
「いや、ホント大丈夫、大したことなかったって」
どうしてわかるの?
まーくんに追及されたくなくて、思わずそう答えてしまったが、答えになっていない。
それどころか、まるで「何かありました」と臭わせるようなことを言ってしまった。
「そう、ならいいけど」
まーくんはそれ以上の追及はやめてくれた。
もしかすると、疑われたかもしれない。
何かあったと勘繰られないように、もっと笑顔でいなくちゃ。
特にまーくんの前では。
まーくんに私がみーくんに言われたことを知られるといけない、気がする。
これは私とみーくんの問題。
私は笑顔を作る。
笑顔ってすごいんだよ。嫌なことがあっても笑顔になれば、それ以上の嬉しい気持ちや幸せな気持ちになれるんだ。
嬉しいことや幸せなことがあるから笑顔になるんじゃない。
笑顔になるから嬉しさや幸せを感じることができる。
これは私が幼い時に気づいた。
「でも、ねここちゃん。無理してうちに来なくて大丈夫だよ」
「もしかして迷惑だった?」
「いや、そうじゃなくて、もっと自分を大切にしてほしいってことだよ」
きっと、まーくんは私のことを心配してくれてるんだね。
「うん、心配してくれてありがとうね」

