私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです

私は―――――夢をみている。




夢を”夢”だと自覚できるということは、いわゆる明晰夢(めいせきむ)ってやつかもしれない。




そこで私は”大切なもの”をなくした。




それを探すために、私は大雨の日の中、川辺にいた。




お母さんに、雨の日は川に近づいちゃいけないって言われていたのに。



私は川の中に入った。



もしかすると、”大切なもの”は川に流されて、どこかの岩にひっかかってるかもしれない。



そう思うと、いてもたってもいられなかった。



強い風が吹く。



被っていた帽子が飛ばされる。



その視線の先の橋、欄干に身を乗り出し、こちらに手を振っている人がいる。



子供?



男の子?



男の子はなんか叫んでいる。



そう認識できた瞬間、私は身体が支えられなくなり、光を歪ませる世界に飲み込まれてしまった。



最後にみた男の子はなんて叫んでいたんだろう。



「―――――ここ」



......。


......。




「――――おい」


「―――葵」




ドシッ。

頬に何か当たる。



「おい、葵。起きろ」


「みーくん?」


私はみーくんの呼び声で現実に戻された。



机の上を見ると、ちぎられた消しゴムの欠片が散乱していた。


「なにこれ?」

「お前が起きないからだ」



どうやら、隣の席のみーくんが消しゴムをちぎって私にぶつけていたようだ。




「もう、普通に起こしてよ」


「めんどくさいだろ」


「消しゴム投げる方がもっとめんどくさいよ」





すると、みーくんは親指で黒板の方を差す。




もう授業が終わっていたようだ。

黒板には数式の羅列がぎっしり書かれていた。

うわ、寝てる間に、知らない公式が出てるよ......。





みーくんの方をみると、まだ親指で黒板の方を差している。


「ほら、日直。黒板消せよ」


そうだ、私、日直だったっけ。






私は黒板を消しながら、さっき見た夢のことを考える。







あの日の出来事の焼き増し......。






何度も夢に見た





私の......





大切な想い出。







うう、あの教師筆圧強すぎて、消えないよーーー(泣)