「あの時は私が怒って電車を降りて、でも雨だから駅から出られなくて、ロープウェイ乗り場の、ベンチに座るしかなかったんだよ」
「そうそう。それで僕は小泉さんが、ロープウェイに乗りたいんだって勘違いして、切符買っちゃって。そしたら小泉さん、そのことも、めちゃくちゃ怒って」
「それで、仕方なく乗ったんだよね。そうだったそうだった」
その時に見た町の景色は、雨で曇っていたけど、それでもすごいと思ったのだ。
傘を差した人がどんどん小さくなって、車や、建物なんかもどんどん小さくなって、ぼーっと眺めているうちに、天に昇るような気持ちになって。
結局、頂上に着いたときには、さっきまでのイライラが、どこかへ昇華されていたのだった。



