「今、金ねえから、ラーメンで勘弁してくれないか?」
私の顔も見ずに、照れくさそうに言った高橋隆人の声が、何だかあの阪神が勝った夜、通話してるときに言った、恥ずかしい告白と同じ声に聞こえて、私はおかしくなって、笑ってしまった。
「バカにしてるのか?」
「ううん、違うの。なんか、こういうの懐かしいなって思って」
「懐かしい? 俺、金ねえってお前に言ったことねえけど」
「そうだね。あんたはいつも無理して、私のためにお金使ってたもんね」
「別にそうじゃねえよ。金は男が払うもんだって……」
「はいはい、そうだね。だから、ちゃんと今日も払ってよ? 私今日、朝ごはん抜いたから、結構食べるけど、覚悟してね?」
「バカ。俺の方が食べるわ」
結局、私はラーメン2杯、高橋隆人はラーメンを3杯食べた。
でも、餃子はあの頃と同じように、1皿を二人で分けて食べた。