「やだね」
断られてしまった。
意外というか、人一倍気遣いができて、みんなに優しい学校の人気者の、河野浩介。こういうことは、一番断りそうにないと思ったのだが。
「私、あんたに何かした?」
「いや、そういう意味じゃなくて」と河野浩介は、自販機にもたれかかって、缶コーヒーを開けた。
「俺が思うに、そういうのって自分で返した方がいいと思うんだ」
なるほど。これが学校の人気者か。
ただ優しいだけじゃなく、正しいと思うこと、間違っていると思うことを、はっきり言えるんだ。
だから、みんなから好かれるし、学校の中で、河野浩介を嫌ってる人は、私しかいないんだ。
断った河野浩介は、何も悪くない。頼らなかった青山碧や、高橋隆人も悪くない。
こういう大事なことを、人任せにしようとした、私が一番悪い。



