そして、迎えた試合当日。
沢山の人たちが割れんばかりの熱い声援を送る中、私はいつもの席で固唾を飲んで、試合の行き先を見届けてようとしていた。


「志田ちゃん、そんなとこでしょーたのコト見える?!」


そう声を掛けてきてくれたのは、隆史くん。
私はそれに曖昧に笑い返す。

すると、


「ほら、こっちこっち!」


とほぼ引き摺られるようにして、翔太がはっきり見えるド真ん前の席に座らされてしまった。


「これから、しょーたのサーブだよ!いっけぇー!しょーた〜!!」


誰にも負けないくらいの、熱い声援。
その激励を全身に受けて、翔太は綺麗で早いサーブを弧を描くように、ボールを相手チームのコートへと落とす。


ボスッ


重くて鈍い音がして、相手のレシーブが乱れた。


「ナイッサーー!!」


乱れたボールは相手コートの中で上手くさばくことが出来なかったようで、あらぬ方向へと飛んで行った。


隆史くんは、落ちてしまうのではなかろうかと言うくらい、身を乗り出して翔太へどんどん大きな声を上げていく。


「しょーた、イケ!イケ!!!よっしゃー!」


気付けば、私と隆史くんの近くには、翔太のイツメンも、未来や小桜も来ていて、私はそれだけで凄く心強くなっていった。

だからなのか、気付けば声を出して、


「翔太ー!ファイトー!」


なんて口にして叫んでいて…その声が届いたのか、翔太が一瞬だけ私の方を向いてから、他の選手にサインを送った。


「お。しょーた、やるな?」

「ん。やるやる、あの顔は!」


隆史くんとイツメンの会話に何?と聞こうとしたら、その瞬間……。


バシンッ


一際大きな音を立てて、翔太が相手側のコートに、スパイクを決めていて…その滅茶苦茶高いジャンプ力と、着地した瞬間にキラキラと飛んだ汗が、凄く眩しくて……くらり、と目眩がしたような気がした。


「志田ちゃん、今の見た?見た?」

「う、うん」

「あれ、志田ちゃんがいたから出したスーパースパイク。いつもなら、絶対に出さないやつだよ」


なんて言われて、頬が熱くなり胸がざわついて来た。

そんな、私のために出せるような技とか…どこまでスパダリ…いや、イケメン効果率高いの…。


そう思っていたら、審判が声高らかに試合終了の合図を出した。


試合の内容が書かれた掲示板を見れば、3セット先取でのストレート勝ち。


向こうの学校の関係者たちが泣き崩れる中で、翔太たちは嬉しさを噛み締め、肩を組んで称え合っている。

顧問である丹下先生も感激しているのか、少し目頭が赤くなっていた。

勿論、私も嬉しくて翔太がこちらを向いた瞬間に、大きく手を振った。


「あやっちー!約束果たしたよー!」

「うん!おめでとう!」


そんな中…私は翔太の些細な変化に気付けないでいたんだ…。