恐ろしい怪物の仮面を作りながら灯が言うと、雫はお化け屋敷と書かれた看板を作りながら、「ドキドキしません」とすぐに言う。

「あなた、諦め悪いのね。何十回も振られているのに……」

こんなに振られれば、新しい人にときめくんじゃないの?

そう雫に言われたが、灯は真剣な表情で首を横に振る。好きになるきっかけはみんな違った。でもどれも真剣な恋で、しかし諦めなければいけないこともあった。

「僕は、今真剣に三島さんに恋してる。三島さんが誰かを愛することができなくても、僕や他の誰かを好きになることがなくても、僕はあなたが好きだ。色んな人を好きになったけど、ここまで諦めが悪くなったのは初めてだけどね」

灯が微笑むと、「……馬鹿」と雫が小さく呟く。小説や漫画なら、彼女の白い頬は赤く染まっていただろう。しかし、彼女の頬はいつもと変わらない。だが、目線はあちこち忙しそうに動いていて、動揺していることがわかる。