目を見開いても、何か言わなくちゃと口を開いても。
見えるのはいつものユウで、他の情報を処理する時間が足りない。
「そ、それって……」
「そーだよ。それってつまり、どういうこと? はっきり言ってくれないと分かんないよねー」
そうじゃない。
考えなくても、ちょっとだけ裏を読めば分かる話を聞き返したのは私なのに、実くんは大袈裟に同調する。
――もしかして、私に聞かせたいの。
そう思うくらい、唇が耳に近い。
びっくりして拘束から逃れようと身を捩ると、引いた腰の分よりも唇や目鼻が近づいた方が大きかった。
「……っ」
ユウが唇を噛んだのと、私が叫ぶのを堪えたのはほぼ同時。
「残念。聞きたかったのに。我慢できちゃったんだ」
(な……)
我慢したんじゃない。
あまりのことに、悲鳴すらでなかった。
まさかまさかまさか。
さっきまで服越しに回っていた実くんの腕が、いつの間にか直接肌に触れてるなんて。
「一華さん、冷た。冷え性? あの時は、酔ってて熱かったのに」
何もかも、フェイク。
冷たい、なんて言いながら、触れたのは最初に掠めただけ。
きっと、それも意図せず当たっただけなんだろう。
意味ありげに曲がった指の関節は、ただ私の服を中から膨らませているだけで、どこも包んですらいない。
あの夜だって、絶対どこにも触れなかったはずだ。
でも、それならどうして、こんなことするの。
「あったかい? 俺はずっと家にいたから……ね、ほら。あったまっていいよ」
響くのは、実くんの声だけ。
チラッと動いた黒目は、どちらを見たのかな。
私か、ユウか。
気になるのにとても無理で、すぐにぎゅっと目を瞑ってしまって分からない。
「……っ、みの」
振り絞った声があまりに細くて、実くんの名前を呼ぶのを途中で諦めかけた時。
「……つまり、好きだってこと。女に興味がないなんて嘘で、俺はずっと、イチを騙してたってことだよ」
告白を聞き終えて何を満足したのか、実くんの手がすんなりと裾から出てきた。
「……離せよ」
「なんで? 」
それでも腰に再着陸した手を、ユウが荒く掴んだ。
「告っただけで、なに自分のものみたいに言ってんの? 決めるのは、一華さん。あんたの言ったとおり」
「……っ、だとしても! 何してもいいわけじゃないだろ」
(……あ……)
暴露されてもいい。仕方、ない。
「……そうだよ。だから、口説くの」
なのに、実くんは乱暴に引き剥がされた自分の掌を見つめて、ぽつんとそう言ったきり何も言わなかった。
「……イチ」
実くんに怒鳴ったのと、私を呼ぶ声が違いすぎて、ユウを見上げることができなかった。
「……ごめん。明日、説明させてくれる? ちょっと今は……ごめんな。……同じこと、したくないから」
「う、うん……」
とにかく、二人を離した方がいい。
今だって、実くんが鼻を鳴らしたことでまた一触即発な感じ。でも、引き離した後は、私は――……。
(……わたしは)
――どこに、いるんだろ。



