「…今度は喧嘩しない?」


「うん」



精霊さんは、ぶんぶんと頭を振ってみせる。



「ご飯をばら撒いたりしない?」


「しない」


「……なら作る。だけど待ってる時間は暴れたりしちゃだめだよ?」



精霊さんは賢いから理解してるはず。


きっと前の出来事を怒ってるんだと思われてるんだろうな。

怒ってはないんだけど、あれは地獄絵図だったからね…。



「そら」
「ごめん」
「しゅん」
「あやま、る」


「えっ? いや全然気にしてないよっ…!! だから謝らないで…!」


「でも」
「わるい」
「した」


「悪いかもしれないけど私は怒ってないよ!」


「そっか」


「もう謝っちゃだめだよ」


「そら」
「やさしい」



精霊さんの安心した姿に私はほっと一息ついた。


私が優しいのはみんながいるから優しくいられるだけで…。


……なんてきれい事だよね。

こんなこと言うのやめよう。



「マロちゃんにも言ったんだけど、今日お布団干すからご飯食べ終わったらみんな自分のお布団持ってきてね!」


「おーけ」
「まか、いない」


「あ、マカくんいないなら私が持っていくよ」



簡単に言うと……マカくんは精霊さんの中の『ダッディ』というグループに属しているリーダーの精霊さんで、私たちと一緒に寝ているうちの一人だ。


みんなから信頼を得ているすごい人なんだよね。

マカくんは尊敬している人の一人。



「精霊さん、精霊さん」


「なに」


「ダッディって今順調なの?」



ダッディは自然を護るために動いているグループだから、大変なお仕事なのにマカくんはそんな素振りさえ見せない。



「いま」
「なにも」
「ない」


「ほんと?」


「うん」
「けど」


「けど…?」


「……」


「え、なに?」



精霊さんが急に黙って私は眉間に皺を寄せた。


なにか、隠している…?



「ふ~ん……」



無理に訊こうとはしないけど、一応頭に入れておこう。