「あなたは……私を、どうするおつもりなのです?」
「さて、どうしてやろうか。美味しく食べてしまうのもいいかもしれないな」
「た、食べるって……」
と、腕の中で肩を強張らせた吉乃を見た咲耶はそっと顔を綻ばせると、不意に吉乃の耳元に唇を寄せた。
「悪い、冗談だ。吉乃はなにも事情を知らないのだから、戸惑うのも無理はない」
「冗談……?」
「とにもかくにも、もう少しだけ大人しく俺に抱かれていろ。どうせなら邪魔の入らぬところで、ふたりきりで話がしたい。お前を食べるのも、ふたりきりのときの方が良さそうだしな」
「なっ!」
色香をまとった甘く掠れる声に鼓膜を揺らされ、吉乃はさらに身を硬くした。
顔を茹でダコのように赤く染めた吉乃の初心な反応を見た咲耶は、今度は面白そうに口角を上げて笑う。
(も、もしかして、私の反応を見て楽しんでる?)
疑問を抱いても声には出せない。
結局、吉乃は目的地につくまで咲耶の腕に抱かれたまま、借りてきた猫のように大人しくしていることしかできなかった。
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『遊郭の花嫁』は11月28日より、スターツ出版文庫にて発売予定です。
これから遊女になる吉乃と、謎多き軍人・咲耶はどうなっていくのか……
この先の本編では、個性豊かなあやかしや人間たちが登場予定です!
ここまでの試し読みの続きは、ぜひ書籍で楽しんでいただけましたら嬉しいです^^
2021.10 小春りん



