俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 今日から、この人が旦那様になったんだ……。

 その事実を噛みしめ、私のほうに傘を傾けてくれている彼を見上げて唇を弓なりにする。


「傘、ありがとうございます。千里さん」


 もう私も天澤になったので、思いきって名前で呼んでみた。一瞬面食らったような表情を見せた彼は、私を一瞥してふっと口元を緩ませる。


「違和感しかないな」


 味気ない返答だがその顔は穏やかなので、きっとまんざらでもないのだろうと勝手に思っておく。

 その直後、彼はなにかに気づいたようにはっとする。


「つぐみ」


 私も初めて名前を呼ばれたと同時に、肩を抱かれて彼に寄りかかってしまった。

 驚いたのもつかの間、私の横を自転車が通り過ぎていく。千里さんは肩を抱いたまま「歩道を走るなよ」と忌々しげに呟いた。

 ……びっくりした、守ってくれたんだ。

 ベタなシチュエーションなのに頬が火照ってしまって、女はこういうのに弱いとつくづく思う。名前呼びも確かに違和感はあるものの、またひとつ距離が縮まった気がして嬉しかった。