俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 翌日の午後二時、私と天澤さんは並んで区役所の窓口に立っていた。人のよさそうな担当の中年男性が、私たちを見上げて和やかに微笑む。


「はい、これで手続きは終了です。おめでとうございます」


 気恥ずかしさと背徳感のようなものが交じり合った複雑な心境で、私はぎこちなく笑い、彼は平然とした様子で「ありがとうございます」と声を合わせた。

 ──たった今、蒼麻つぐみは天澤つぐみになりました。入籍というのは案外あっさりしたもので、まったく実感が湧かない。

 区役所を出ようとすると、しとしとと降る雨でアスファルトが濡れていた。予報通りだ。

 私たちは、職業病で休日も天気を調べる癖がある。今日もリビングで顔を合わせた私たちがまず見たのは、ニュースの天気予報ではなく気象庁が公開している航空気象情報。航空気象はとても精度が高く、より詳しい情報が得られるから。

 ふたりでネットを覗き込み、英数字が並んだ表示を見ただけで今日の天気はいまいちだと把握した。風はほとんど吹かないが、午後二時頃からずっと雨らしい。

 そのため、天澤さんが車を出してくれた。彼が運転する、高級ブランドのエンブレムが輝く愛車に乗せてもらうのは初めて。貴重な体験ができたから雨でよかった、なんて密かに思っている。