「雑談はまた休憩のときにしよ。今日もバリバリ働くわよー」
私も背筋をピンとさせて「はい」と返事をし、パソコンのディスプレイに英語や数字が羅列した表を映し出す。
これは本社にいるディスパッチャーから送られてきた、フライトプランと呼ばれる飛行計画書だ。飛行ルートや高度、搭載燃料などが詳しく書かれていて、パイロットはこれがないと飛ぶことができない。
この羽田空港を離発着するすべての飛行機が安全にフライトできるよう精一杯補助しようと気合いを入れ直し、フライトプランの確認に入った。
仕事が終わると、空港から徒歩十五分の場所にある三階建てのこぢんまりしたマンションに向かう。築三十年でレトロ感漂う……と言えば聞こえはいいが、つまりは外壁も薄汚れていて年季が入っている建物である。
ここに住む最大のメリットは、空港に近いということ。以前はもっと離れた別のアパートに暮らしていたが、働き始めてから不規則な仕事の大変さを実感し、契約が切れるタイミングで四月に引っ越してきたばかり。
住んでしまえば多少の古さなど気にならなくなったし、やはり通勤がだいぶラクなので引っ越して正解だったと思っている。



