「〝彼の冷たい瞳に蔑まれてなじられたい!〟って密かに悶えてるドM女子は多くても、実際に臆さないで対等に話せる子は珍しいよ。まあ、積極的にアプローチする肉食CAもいるみたいだけど」
「怖いもの知らずですね……」


 私は普通に優しくされたいよと思いつつ、しみじみと呟いた。

 美紅さんの言う通り、イジメられたい願望がある女子は多数いるらしい。積極的にアプローチするCAも、ある意味ドMのような気がする。


「まあ狙う人は多いでしょう。次、機長昇格試験に受かれば最年少機長になるんだし、加えてあの容姿だもの。ちょっとくらい性格に難アリでも目をつぶれるじゃない」
「いや括目しましょうよ、むしろ」


 すぐさまツッコミを入れると、美紅さんはケラケラと笑った。

 天澤さんは当然ながらモテる。でも、彼女がいる気配はないんだよなぁ……と、彼のオフの姿を頭の隅に浮かべる。

 私が彼と対等に話せるのは、他の人よりちょっとだけプライベートを知っているからかもしれない。実は私たちには意外な接点があるのだ。

 そういえば、美紅さんにもまだ話していなかったなと考えていると、彼女はスイッチを入れるように伸びをする。