俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 ところが近づくにつれ、機体がまるでやじろべえさながらに左右に揺れていて、だいぶ風に煽られているのがわかる。やはり影響があるようだが大丈夫だろうか。

 次の瞬間、着陸態勢に入っていたそれの機首が急に下がり、私はひゅっと息を呑んだ。


「ウインドシア……!?」


 思わず口からこぼれたそれは、風速や風向きが急激に変化する危険な現象のことで、ベテランのパイロットにも恐れられているらしい。今、あの機体も強い下降気流の影響を受けているのは明らかだ。

 無意識に肩に力が入り、息を止めて見守る。

 数秒後、滑走路に降りる直前に機首は上を向いて再び上昇を始めた。ゴーアラウンド、つまり着陸のやり直しをすることになったのを見て、私はひとまず胸を撫で下ろす。

 離着陸時にウインドシアが原因で航空機事故を招くことも珍しくない。そんな最悪の事態を一瞬想像してしまったから。

 ドクドクと大きな音を立てていた心臓が落ち着いた頃、上空を旋回してきた飛行機が再び着陸態勢に入る。

 今操縦しているのは天澤さんなのか、それとも機長に交代したのかはわからないが、とにかく無事に降り立ってほしい。