俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 台風が過ぎ、ようやく社内が落ち着きを取り戻し始めたのは午後三時頃。

 朝コンビニで買ったおにぎりをデスクで食べた以外、まともな休憩を取れなかった私と美紅さんは、四時まで働いて休憩分の一時間早く上がることにした。

 仕事を納めてオフィスを出ると、なんだか久しぶりに外の空気を吸ったような気がして清々しい。けれど、身体の怠さは普段の倍以上だ。


「あ~疲れたぁ~。ぶっ通しはキツいよ」
「久々に修羅場でしたね……」


 美紅さんと一緒にお互いを労いながら、のっそりとした足取りでターミナルビルへ向かう。

 暴風域は抜けてもまだ風が強い。美紅さんはなびく長い髪を押さえ、雲に覆われた空を見上げる。


「そろそろロンドンから帰ってくる頃ね。今回のメンバーだとキャプテンが後進の育成に熱心な人だから、天澤さんが操縦することになるんじゃないかな」


 彼の名前が出てドキリとするも、気になることを問いかける。


「この悪天候の中でも?」
「そうよ。実際に訓練しないと意味ないでしょう」


 そりゃあそうか。悪天候でもスムーズに離着陸させられるスキルを身につけなければ、機長には到底なれないのだから。