私は再び仏頂面になり、胸を張ってみせる。
「これでも機長から『安心して飛べたよ。ありがとう』って言われたことあるんですからね」
「ああ、お世辞を間に受けているのか。かわいそうに……」
「失礼な!」
憤る私をものともせず、彼は意地悪く口角を上げた。
その直後、機長がやってきた途端に天澤さんの空気がすっと変わる。健康チェックを行うためにカウンターへ向かうふたりを見送り、私はひとつ息を吐いて自分のデスクへと戻った。
いつの間にか、隣のデスクに妹尾 美紅さんが座っている。緩くカールした長い髪の彼女は、美人で優秀な三歳年上の先輩。私の教育係であり、かつ仲よくしてくれているお姉さんだ。
美紅さんはニヤニヤしながら、私のそばにキャスターつきの椅子をゴロゴロと動かしてくる。
「おはよ、つぐみちゃん。またドSコーパイと張り合ってたの?」
「おはようございます。だって毒吐かれっぱなしは悔しいじゃないですか」
私たちのやり取りをいつも面白がって見ている彼女は、「逞しいわ~」と感心するように唸った。



