さらりと流れる黒髪に、とても綺麗なのに常に一線を引いているような冷たさを感じる瞳、どこか色っぽい薄めの唇。
スペックの高さに加えてどこからどう見ても眉目秀麗な男なのだが、S系パイロットとしても名高い。
そんな彼と接する機会はこの部門にいるとわりとあって、私は会うたび口の端を引きつらせている。理由はもちろん、彼が意地悪だからだ。
「あ……天澤さん、おは──」
ひとまず〝おはようございます〟と挨拶しようとしたものの、それより先に彼の長い人差し指が天気図の記号をびしっと指差す。
ああ、またなにか嫌味を言われそうな予感。
「ここ、なんて書いてある?」
「……CAT」
「意味は?」
「晴天乱気流。わかってますよ、晴天の空での乱気流に巻き込まれたら危険だってことは」
わざとらしく確認してくる天澤さんに、私は口を尖らせて答えた。
通常、乱気流は雲の動きからパイロットも目視できるが、晴天乱気流は今日のように雲がない状態で突然発生する。予測が困難なので要注意な気象現象のひとつだ。



