俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


「まだ服も着ていないのに!」
「誰もお前の裸に興味ないから、さっさと来い」


 どさくさに紛れてひどいことを言われているが、文句をつけている場合ではない。とにかくまず服を着て、ここから出なければ。

 パジャマ代わりにと用意していた色気のないTシャツと短パンを急いで身につけ、ほぼ無意識にスマホだけ持って勢いよく玄関のドアを開けた。

 焦げ臭い匂いが鼻をついて恐さを実感するも、すぐそばに立っていた天澤さんを見ると、ほんの少しだけ安心する。


「天澤さんっ……」
「貴重品は?」
「ああっ、バッグ!」


 至極冷静な彼に言われて手ぶらで出てしまったことに気づかされ、リビングに置いたままのバッグを指差した。財布やら保険証やら、大事なものはだいたいあれに入っている。

 彼は若干面倒臭そうに短くため息をつき、素早く中へ入ってバッグを取る。ついでに私がさっきまで使っていたタオルを持ってきて、口に当てられた。

 煙を吸わないための対策までしてくれる彼にお礼を言う間もなく、彼は私の手を取り「行くぞ」と言って駆け出した。

 警報が鳴り続ける中マンションから脱出すると、すでにたくさんの住人が外へ出て騒然としている。