そんなふうに巡らせつつお風呂から上がり、下着だけ身につけた直後、マンションの廊下から物騒な音と機械的な音声が聞こえてくる。
これって……火災報知器? 誤作動かな。
なにかの拍子に鳴ったんだろうかと、呑気にタオルで髪を拭きながらとりあえずリビングに向かう。するとインターホンが鳴り、その直後に玄関のドアがドンドンと叩かれ、驚きで肩が跳ねた。
「蒼麻、おい、いるか?」
次いで外から聞こえてきたのは、今しがた考えていた副操縦士様の声だ。一体どうしたというのだろう。
鍵をかけているので下着姿を見られることはないが、なんとなくタオルで肩を包んで玄関に行き、ドア越しに応える。
「天澤さん、どうしました?」
「本当にお気楽だな……エマージェンシーだ。死にたくなかったら今すぐ出てこい」
エマージェンシーの意味は緊急事態。その単語でようやく事の重大さを認識し、私は瞠目する。
「えっ、まさか本当に火事!?」
「だから警報が鳴ってんだろ」
心底呆れた調子の声が返ってきた。天澤さんはまったく焦った様子がないけれど、私は一気にパニック状態に陥る。
誤作動じゃなかったの!? どうしよう、なにも準備していない!



