俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 暗澹とした声が響き、胸に痛みが走る。父はその何倍もつらいだろう。

 まつ毛を伏せていた千里さんは、少し目線を上げて「でも」と続ける。


「それこそ理不尽ですよね。あなたの記事がきっかけにはなったが、父を悪に仕立てたのはあとに続いたマスコミのほうだったのに。結局、自分の憤りを治めるために恨みを抱いていて、それに都合のいい対象があなただったんだと思います」


 自分自身の気持ちと向き合うようにそう言った彼は、「……俺はただ、父は正しかったと皆にわかってもらいたかった」と、ぽつりと呟いた。

 彼の本心は、詰まるところそれに尽きるのだろう。世間の誤解を解きたくてもできない悔しさが、父への憎しみに繋がってしまったのだ。

 しかし顔を上げた彼は、憂いを帯びつつもすっきりとした表情になっていた。


「あなたがなにも感じていないわけではなくてよかった。あなたも後悔していたのだとわかっただけで、気持ちが晴れました。もう過去に固執しても意味がない。父の件にこだわるのは、金輪際やめにします」


 ……ようやく千里さんの中でひと区切りついたらしい。彼自身が納得のいく結末にできたのだとわかり、私の心も軽くなっていく。