俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


「そのあと正しい調査結果を見て、訂正する記事を出そうとしたが却下されてしまった。『黙っていれば読者はすぐに忘れる。会社の評判に関わることをあえてする必要はない』と。自分には、それを変えられるほどの力がなかった」


 父はおもむろに席を立ち、棚の引き出しから一枚の紙を取り出す。それをテーブルに持ってきて、「出そうとしていたのはこれだ」と千里さんに差し出した。

 あれは、間違いだったと認めた記事の原稿?

 それを見下ろす千里さんの表情に、心なしか切なげな色が滲む。


「階堂さんが仕事を続けていられなくなったこと……亡くなったことを知って、酷く後悔した。自分のせいで、ひとりの人生を狂わせてしまったと」


 父は心底自戒しているように声を震わせ、「本当に、申し訳なかった」ともう一度深く頭を下げた。

 こんなに弱々しい父は初めて見る。父を擁護するわけではないが、ひとりでずっと罪の意識に苛まれていたのだろうと感じた。

 しばし黙っていた千里さんは、静かに原稿を置いて口を開く。


「……父は、謂れのない罪を負わされて非難され、生き甲斐だったパイロットの職にも復帰できずに死んだ。そうした原因はあなたにあると、俺はずっと憎んできました。訴えてやろうかと思ったくらいです」