「すまなかった……!」
父が謝る声が聞こえ、私はそっとドアを開けてみる。ふたりは先ほどのまま向かい合って座っていて、父がテーブルに額がつきそうなほど深く頭を下げていた。
ゆっくり顔を上げた父は、ここからは表情は見えないが、痛切そうな声色で言う。
「君のお父さんは、階堂剛史さんだろう?」
お父様の名前を出され、千里さんは目を見開いた。私も同じく驚いている。
インシデントについて調べているうちに千里さんの存在も知ったのだろうか。だから最初に顔を合わせたとき、あんなによそよそしかったんだ。
とはいえ、自分から切り出すとは思わなかった。
「ご存知でしたか……俺が息子だと」
千里さんの言葉に、父は頷いた。そして、重々しい口調で当時のことを話し出す。
「オーバーラン事故を取り上げたとき、取材したときの状況や専門家からの意見でヒューマンエラーの可能性が大きいと判断した。だが、あとから出てきた情報も合わせると直前になって違うかもしれないと疑惑を抱いて、記事を載せるのを止めるようかけ合ったが……間に合わなかった」
無念そうな声を放つ父を、千里さんは表情を変えずにじっと見据えていた。父の独白は続く。



