俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 オフィスに入ってからは、もちろん気持ちを切り替えて業務を行った。一日乗り切って帰宅した今は、お風呂でぬるめのお湯に浸かりながら朝の出会いを思い返している。

 あの人がまさか管制官だったとは。パイロットに細かい指示を出して滑走路へと誘導する彼らを、私は尊敬してやまない。

 羽田空港では最大で一時間あたり約八十回、最短四十五秒間隔で飛行機が離着陸している。少しのミスも許されない緊迫した状況が続く中、こんなに膨大な数の飛行機をさばくのは並大抵ではない。

 責任重大な仕事をしている上に、あのスマートな言動。素敵以外に当てはまる言葉が見つからない。名前を聞きそびれてしまったのが悔やまれる。


「誰かさんもあのくらい紳士的だったらなぁ」


 なぜかお隣さんの顔が頭に浮かび、天井を見上げてひとりごちた。

 もちろんパイロットこそ乗客乗員の命を預かる責任重大な仕事だし、操縦技術も備えていて文句なくカッコいい。けれど、天澤さんは性格に難がありすぎる。

 まあ、だからこそたまに見る微笑みが格別なのか。女性ファンはきっとそのギャップにやられてしまうんだろう。