彼らが会議室を出ていって再びふたりきりになり、なんとなく気恥ずかしさを感じつつ問いかける。
「真柴さんと仲よくなったんですか?」
「そういうわけではない。まあでも、わだかまりはなくなったか」
穏やかな調子で答えた千里さんは、雨上がりの滑走路に視線を向けて話し出す。
「今回、大きなトラブルが起きてももちろん彼は冷静だったけど、たぶん心の中では妹が気がかりで仕方なかったと思う」
フライトを思い返しているらしい神妙な横顔を、私も難しい顔をして見つめる。
大切な人を乗せた飛行機が危機に見舞われたら、自分なら到底冷静でいられる気がしない。やっぱりパイロットは並大抵の精神力ではできない仕事だし、心から尊敬する。
「俺も操縦しながら、もしつぐみが乗っていたらって考えると身震いした。でも同時に、大切な人を絶対危険な目には遭わせたくないって気力が湧いてきて、最後まで落ち着いて対処できたんだ」
凛とした澄んだ瞳が、私をまっすぐ捉える。
「お前も一緒に飛ばしてたんだよ、あの飛行機を」
もったいないほどの言葉をもらえて、胸の奥から熱いものが込み上げる。あの状況の中、私のことを考えてくれていたなんて。



