「君の旦那はさすがだったよ。初めて天澤がペアでよかったと思った」
彼は千里さんに向き直り、「ありがとう」と頭を下げた。
今回のフライトで心変わりがあったのか、千里さんに対して誠実になる彼の姿を見て、私まで胸がじんとする。千里さんも真剣な面持ちになり、「こちらこそ」と返した。
なんだかいい雰囲気に変わってきたみたい。そんなふたりを微笑ましげに見ていた美紅さんも口を開く。
「つぐみちゃんも、メーデーなんて聞いたらもっと取り乱すんじゃないかと思ったけど、すごく冷静に対処していて立派でしたよ」
「そんな……」
立派だなんてほどではないです、と恐縮しながら肩をすくめると、千里さんがぽんと頭を撫でる。
「そうか。成長したな」
素直に褒められ、じわじわと喜びが湧いてきた。この間は叱咤されたから余計に嬉しい。
ほのぼのする私たちに美紅さんはふふっと含み笑いして、真柴さんの腕を引っ張ってドアのほうへ向かう。
「さあ、邪魔者は早いとこ退散しましょう」
「そうだね。俺たちも早くディナーに……あ、冗談です」
美紅さんにじとっと睨まれる真柴さんがおかしくて、私は失笑した。



