「なにやってんですか」
「あ、どうぞ気にせずいちゃいちゃしてて」
真柴さんは、腕組みをして仁王立ちする千里さんをよそにへらりと笑う。その隣で、美紅さんが私に向かって両手を合わせ、「ごめん」と申し訳なさそうにしていた。
おそらく、興味津々で覗こうとしていた真柴さんを美紅さんが止めてくれていたのだろう。結果ふたりに見られたかもしれないと思うと、私は顔から火が出そうだけれど。
あえて空気を読まない真柴さんは私たちの中に交ざり、少々疲れた様子で苦笑する。
「しかしまいったねぇ、今回は。あとで妹に散々文句言われるだろうな」
「妹?」
私が首を傾げると、千里さんが「今回のフライトに乗っていたんだと」と教えてくれた。
そうだったんだ、妹さんが……。本当に何事もなくてよかったと改めて実感する私の横で、美紅さんも眉を下げている。
「大変でしたね……妹さん、女たらしな兄を持って泣いているんじゃないですか?」
「そっち?」
遠慮のない彼女に、真柴さんは「ひどい」と呟いてしょぼんとした。
なにげに息が合っているふたりに笑ってしまうが、彼はすぐに機長としての凛々しい表情になり、私に目を向ける。



