「……会いたかった」
ストレートなひと言が鼓膜を揺すり、自分と同じ気持ちだったのだとわかってまた涙が込み上げる。彼の背中に手を回し、ぎゅっとしがみついた。
「よかった……本当によかったぁ」
「心配した?」
「当たり前じゃないですか!」
半泣きになりつつ憤ると、千里さんはいたずらっぽく笑った。そして、ふたりのときにしか見せない優しい表情で、私の髪を撫でる。
「ただいま」
「おかえりなさい」
いつもの挨拶が特別なものに感じる。なんて幸せなやり取りなんだろう。
熱く見つめ合い、自然に唇を近づけようとしたとき、なにやらドアのほうで人の気配がした。千里さんから視線を外して彼の後方に向けると、なんとドアが少し開いている。
廊下でコソコソとなにかをしゃべっているのは、美紅さんと真柴さんだ。
「ちょっと、ダメですよ真柴さん」
「あいつがデレてるところ見たくない?」
「そりゃ見たいですけど……!」
小声で言い合っているふたりに、ものすごく不機嫌そうな千里さんが近づいていく。



