「お仕事はなにをされているんですか?」
気になって質問すると、男性は含みのある笑みを浮かべて滑走路がある方向を指差す。
「あそこにある塔で働いています」
その返事を聞き、数秒考えた私は大きく目を見開いた。
空港で〝塔〟と言われて真っ先に思い当たるのは、離着陸する膨大な数の飛行機を誘導している管制塔だ。まさかこの方は、エリート中のエリート……。
「かっ……管制官!?」
驚きでつい声を上げてしまった私に、彼は眼鏡を押し上げてクスッと笑う。
「安全な空の旅を守るために、今日もお互い頑張りましょう。オペレーション部の蒼麻さん」
急に名前を呼ばれてドキリとする。社員証を拾ったときに見て覚えたのだろう。
咄嗟に言葉が出ず口をもごもごさせている間に、彼は颯爽と去っていく。私はその後ろ姿を眺めながら、ヘッドセットをつけて流暢な英語で航空管制を行う彼を想像して、「カッコいい~……」と呟いた。



