「俺は問題ありません。操縦を代わります」
落ち着いて、最良だと思う方法を口にした。
真柴さんはその表情に葛藤を露わにしている。もちろん嫌がらせでためらっているのではなく、どちらが操縦したほうがより安全かを思案しているようだ。
「訓練でも想定されていない悪条件が重なっている。いくら天澤でも難しいランディングになるぞ」
当然、それもわかっている。着陸が完了するまでの間に、予期せぬ不具合がさらに発生するかもしれない。
かと言って、着陸を遅らせるわけにもいかない。残っている燃料は、漏れ出した分も考慮すれば上空待機やゴーアラウンドする余裕はないのだから。そもそも、いつ深刻な状態になってもおかしくない機体をこのまま飛行させるのは危険だ。
「やるしかありません。こういうときのために俺たちコーパイがいるんでしょう」
まっすぐ前を向き、迷いのない声で力強く放つ。
「妹さんも、全員必ず守ります。俺も無事に帰らなきゃいけない、あいつのために」
今頃、つぐみたちのもとにも連絡が行っているだろう。きっと不安がっているに違いない彼女の顔が浮かび、胸が苦しくなる。
この機内にいる全員の帰りを、皆の大切な人たちが待っている。なにがあろうと、無事に送り届けるのが俺たちの使命だ。



