俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 管制とのやり取りをしながらひとつずつ対応していくと、ブレーキシステムの不具合だけが解消されないことが判明する。


「ブレーキが効かないかもしれないな。羽田も雨のようだし、滑走距離が伸びるのは必至だ」


 着陸時の注意点について話し合う中、父のインシデントが脳裏をよぎる。オーバーランの危険があるという、似たような状況になるとは運命のいたずらか。

 懸念するのはブレーキの件だけではない。


「エンジンの爆発が影響してギアが作動しなくなったケースもあります。今回もそうならないとは限りません」
「ああ。地上からギアが出ているか目視してもらうよう伝えておこう」


 真柴さんの言葉に了承して、管制に伝える。ランディングギアが作動しないと、機体は安定した着陸ができずとても危険なのだ。

 さらに、風はそれほど強くないが悪天候で周りはほとんど見えない。厚い雨雲が低空に広がっていて、その中にいる状態だ。おそらく滑走路も同じ状況だろう。

 訓練を思い出し、あらゆる知識を引っ張り出して着陸に備える。羽田空港に近づき機体も落ち着いているので、乗客を安心させるためにアナウンスをした。