俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 真柴さんも表情を強張らせ「右エンジンを止めよう」と提案し、俺も了承した。

 飛行機はひとつのエンジンが使用できなくても安全に飛べる。それより、さらなる引火を防ぐほうが重要だ。

 そして速やかに消火装置を作動させたあと、真柴さんが言う。


「Contact control MAYDAY」


 管制にコンタクトして緊急事態だと伝えろ、という指示だ。こうすることで、優先的に着陸させてもらえる。

 まさかメーデーを宣言する事態になるとは……と信じられない気持ちになりつつも、冷静さは失わず「Roger(了解)」と返答した。

 東京コントロールに連絡して数十秒後、消火したらしく火災の警告メッセージは消えた。機体が炎上する最悪の事態は免れひとまず安堵するが、燃料は漏れ続けているため予断を許さない。

 今のところは飛行に問題ないため、キャビンとも連絡を取り合う。乗客は比較的落ち着いているものの、振動が大きく、エンジン部分から黒煙も出ていて不安がっているようだ。

 早く到着させたいのが正直なところだが、チェックリストの対処を終えなければ安全に着陸できるかがわからない。