「わかってるんだよ、ただの逆恨みだって。そうでもしないと、やり場のない怒りを抑えられなかったんだと思う。カッコ悪いよな」
……真柴さんの本心を初めて聞いた。彼は「なんでこんなこと話してんだ」とぼやいているが、俺は肩の荷が下りたように気持ちが軽くなっていく。
彼の言葉は、これまで気づかずにいた俺自身の心を代弁してもらえたようだった。
俺が大輔に対して恨みを抱いているのも、どこかに憤りをぶつけないとやっていられなかったからなんだろう。俺も、真柴さんと同じだったのだ。
「……俺とあなたは、どこか似ているのかもしれません」
「え?」
穏やかな声で呟くと、真柴さんは不思議そうに首を傾げた。俺はひとつ息を吐いて制帽を被り直し、彼にまっすぐ向き直る。
「今回のPFも、真柴さんにお任せします。妹さんを無事に送り届けましょう」
珍しく自ら操縦を頼む俺に、彼は目をしばたたかせたあと、ふっと口元を緩める。
「言われなくても当然俺がやるつもりだったけど」
「はいはい」
嫌な気分にはならない憎まれ口に適当に返事をして、小さく笑い合う。わだかまりが薄れていくのを感じながら、俺たちは並んで歩みを進めた。



