翌日の夜、千里さんが忙しくないだろう時間を見計らって電話をした。普段はしないけれど、さすがに指輪のお礼は早く言っておきたくて。
キスをしたことやミスを咎められた気まずさはもちろん消えていないものの、今なら普通に話せそうだと思った。ところが……。
「どういうつもりですか? あの指輪」
千里さんが出た途端、照れ隠しのつもりがなぜかケンカ腰になってしまった。
可愛げがないな!と自分にツッコんでソファに背をもたれるも、彼は特に気にしていない様子で説明する。
『ロンドンに行ったとき、帰る前にそういえば必要かって思い出したから。誕生日も近いし、一石二鳥だなと』
「なんか失礼ですね」
あけっぴろげな発言に、私の口元が歪んだ。
一石二鳥と言われると、雑に扱われている感が否めない……。まあ、面倒臭がりの千里さんらしいか。誕生日を覚えていてくれただけで嬉しいしね。
普通に話せていることにもほっとしつつ、指輪を嵌めてみた左手を掲げて眺める。
「サイズもぴったりですごいです」
『寝ぼけてても七号だってしっかり覚えていたな』
半笑いでそう言われ、私はパチパチと瞬きをする。そしてすぐにピンときた。



