リボンのついた、小さな白い箱。わかりやすく置かれたそれを見てドキンと胸が鳴り、テーブルの前にひざまずく。
震える手で箱を開いた瞬間、今日一日我慢していた涙が一気に溢れた。
現れたのは、緩い曲線を描くプラチナのリングに、小粒のダイヤが光り輝く指輪。
フライトで会えないから、ここに置いていったのだろうとわかる。千里さんからの、ぶっきらぼうなプレゼントだ。まるで落ち込んだ私を慰めるみたいに。
「結婚指輪なんて、興味なさそうだったくせに……」
スカイツリーでデートしたとき、買いそうな気配はまったくなかったじゃない。いつの間に用意していたの?
ただの契約妻でしかない私に、どうしてこんな──。
「こんなに、好きにさせないでよ……」
もう認めざるを得ないほど想いが大きくなっていて、指輪を胸に抱いてぽろぽろと涙をこぼした。
この先、私たちの関係がどうなるのかわからないけれど、きっとこれだけは変わらない。
私は、千里さんが好きだ。



