俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 午後四時、シンガポール行きの便は無事離陸したが、しばらくして彼らが向かう先で雷が発生している情報を捉えた。雲がどちらに流れているかを予測し、無線を手にする。

 呼びかけるとすぐに反応が返ってくる。この声や話し方は千里さんだと、今では完璧にわかるようになった。

 緊張しながらも、落ち着いて情報を確実に伝えていく。


「台湾の上空に雷雲が発生しています。飛行ルートにやや被っていますが、おそらく一時間後には通り過ぎているはずです」
『了解しました。新しい情報が入ったらまた教えてください』
「わかりました」


 ひと通りのやり取りを終え、重要なことはすべて伝えたのを確認してほっと胸を撫で下ろす。

 ──しかし、直後に聞こえてきた千里さんの言葉はまったく予期せぬもので、私はまたしても思考停止状態に陥ってしまったのだ。