「お前はなんのためにここにいる? 一瞬の気の緩みが命取りになるのは、パイロットや管制官だけじゃないぞ」
抑揚のない声が、私の胸に重くのしかかった。千里さんは顔を背け、ブリーフィングを行うテーブルへと向かっていく。
……きっと失望されてしまった。最初からたいして期待はされていないだろうけど、ここまで自分の未熟さを露呈したくはなかった。
じわりと涙が滲み目線を下に落としていると、美紅さんのため息が聞こえてくる。
「もう、本当にドS。奥さんにくらいもうちょっと優しくしてよね」
不満げに口を尖らせて文句を言い、私の肩にぽんっと手を置く。静かに見上げると、彼女は慰めるように眉を下げて微笑んでいた。
「同じミスを二度としないように気をつければいいのよ。落ち着いて、ひとつずつ確実に対処していきましょ」
私を励ましてくれる美紅さんに無理やり口角を上げて頷くけれど、それは数秒しかもたず、表情はすぐに暗くなっていった。
美紅さんはフライトプランを手にして、千里さんたちとのブリーフィングに向かう。すっかり意気消沈してしまった私はこのままではダメだと思い、一度オフィスを出ることにした。



