「……愛ならあるよ、ここに」


 誰にも届かない声でぽつりと呟いた。

 もう限界だ、ごまかせない。つぐみが誰よりも特別で、すべてを手に入れたい存在になっていることを──。

 俺は本当に、自分の目的を果たせればそれでいいのだろうか。つぐみを愛して、本物の夫婦になるべく努力するほうが大事なんじゃないのか。

 過去の因縁は自分の中で消化できないだろうかと、これまでは考えなかった選択肢で迷い始め、しばらく自問自答し続けていた。