真柴さんにだけでなく、一緒に食事していた宮路やその他の男女にも、つぐみは大切な人なのだと誇示しておきたくなった。俺の独占欲はこれほど強いものだったのか。

 感情がコントロールできなくなっていると自覚し始めた俺に、泉は心配そうな声を投げかける。


「もういいんじゃないか、自分の気持ちに正直になっても」


 そのひと言が、心の脆い部分を崩そうとしてくる。

 泉も気づいているのだ、俺がつぐみへの想いを押し殺していることに。そして、もう過去に固執するのはやめろと言われている気がした。

 俺はどうするべきかという葛藤と、先ほどの嫉妬から来るいら立ちがせめぎ合う。車の中でその片鱗を露わにし、意地悪く攻める俺に対しても、つぐみはきっぱりと言い返してきた。


「千里さん以外の人となんて、考えるだけで嫌です」


 裏を返せば、俺ならいいと言っているようなもの。それはただ、夫だからという義務的な意味なのかもしれない。

 だとしても、つぐみが俺しか受け入れない意思を持っていることに、たまらなく優越を感じてしまう。


「だったら、俺の味をしっかり覚えておけ」


 情欲を掻き立てられ、熱を刻み込むように彼女の唇を奪った。愚かだと、自分に辟易しながら。