「だったら、俺の味をしっかり覚えておけ」


 色気のある低い声が鼓膜を揺らした直後、唇が重ねられた。

 食べるようなキスは、プラネタリウムでされたものとは全然違う。少し荒々しいのにとびきり甘くて、心臓が痛いくらい暴れている。

 気持ちよささえ感じながら目を閉じて応えていると、一度唇が離された。


「ん、はぁ……っ」
「目を開けて、よく見ていろ。自分が一生を約束した男を」


 甘く独占的に命令する声が、脳内を侵食する。抗う気力をすっかり奪われた私は、言われた通り今度は瞼を閉じずに再び訪れるキスを受け入れる。

 熱く見つめ合ったまま、ふしだらに唇を開ける。水音を響かせて舌を絡める彼から、視線を逸らすことは許されない。

 なに、これ……目つめ合ってするキスって、こんなに恥ずかしいの? 身体が痺れて、お腹の奥までじんじん疼くような、変な感じがする。

 とろけそうな私を、色気に満ちた瞳が冷静に見つめている。それだけでおかしくなりそうで、耐えきれなくなった私はあえなく白旗を上げた。


「んっ、千里さ……もう、や……!」


 精一杯の力で彼の胸を押し、危険な視線から逃げて俯く。呼吸は乱れ、こめかみの辺りでドクドクと脈打っている。