悔しがるような表情をかいま見せる泉さんを見て、私は会の序盤で彼が言っていたことを思い出した。
「もしかして〝気をつけたほうがいい人〟っていうのは、真柴さん?」
「そう。あの人、千里のことを目の敵にしているみたいだから、つぐみさんとの仲を引っ掻き回すんじゃないかと思って」
泉さん、なんていい人なの……! 私たちのためにそこまで気を回してくれていたとは感激する。
泉さんと千里さんが一緒にいるのは初めて見たけれど、お互い信頼し合っているのが雰囲気から伝わってくるし、想像以上に仲がいいのかもしれない。
「テラスでふたりになったとき、変なこと言われたり、されたりしなかった?」
眉をひそめる泉さんに問いかけられ、逡巡してしまう。しかし私自身になにかされたわけではないし、千里さんの悪口を言われたと打ち明ける気にもなれず、「いえ、特に……」と首を横に振った。
真柴さんはやはり千里さんが気に食わないらしい。彼がテラスに来たのは偶然ではなく、故意に嫌がらせをするためだったとすると、だいぶこじらせている厄介な人だ。



