「結婚の決め手はなんだったんですか? どうしてつぐみちゃんを選んだの?」
若干ろれつが回っていない口調で繰り出された質問に、私は顔が引きつる。CAのふたりも苦笑を浮かべてうなだれる。
「玲香……今日はこの件に関する質問はしないって宣言してたのに」
「しかもひとつじゃないし」
彼女たちが小声で嘆いている通り、玲香さんはずっと結婚については話題にしなかったのだけど、きっと酔ってどうでもよくなっちゃったんだな……。頬が紅潮していて目もうつろだし。
この状況で千里さんは一体どう答えるんだろう。皆注目しているし、急に緊張してきた。
真剣にじっと見つめている玲香さんに向かって、彼は口を開く。
「つぐみが特別だから」
出てきたのはシンプルな理由。それだけかと思いきや、まだ続きがあった。
「呆れるほど単純でまっすぐで、気がつくと心の中を陣取ってる。それすらも愛おしいと感じる子はほかにいない」
予想外の言葉に、不覚にも胸が締めつけられた。女性陣は「きゃあ~」と黄色い声を上げ、千里さんはそれに構わず私の肩を抱いたままさっさと歩き出す。



