「操縦も、管制とのやり取りも、コックピットでの意思疎通がうまく為されないと危険を招く。天澤が自己中な態度を取り続けていたら、いつか事故に──」
「そんなことはありえません!」
我慢ならず、つい大きな声で遮ってしまった。離れたところにいる女性グループも、何事かとこちらに視線を向ける。
かすかに驚きを滲ませる真柴さんに、私はなんとか憤りを抑えた声で言う。
「千里さんは、自分に驕って皆を危険にさらすようなパイロットではありません。たくさんの人の命を背負う責任も、恐怖も感じながら操縦桿を握っているんです。だからこそ、相手にどう思われようと、なにかおかしいと感じたら意見する姿勢を貫いているんじゃないでしょうか」
初めてふたりで食事をした日、彼は『毎回緊張はするし、何百人もの命を背負ってると思うと焦りそうになる』と言っていた。
あれは絶対に本心だ。自分に思い上がっているような人間なら、どこまでも強気であんな発言はしないだろう。
「千里さんは、あなたが思うよりずっと誠実です。彼を、信じてください」
真柴さんをまっすぐ見つめ、切実に訴えた。どうか千里さんを悪く言わないでほしい。



