俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


「もしかして、千里さんから聞きました? ロンドンでの一件」
「そう。当然相手にもされなかったみたいだし、これに懲りてまともな恋愛をしてくれることを願うよ」


 呆れ気味の笑みをこぼす彼は玲香さんの本当のお兄さんさながらで、きっと恋多き彼女を心配しているのだろうとわかった。

 こんな素敵な幼なじみが私も欲しかった……なんて思っていると、泉さんの表情がわずかに引きしまる。


「でも、あなたが気をつけたほうがいい人は玲香以外にもいる」
「え?」


 どういう意味だろうと聞き返そうとしたとき、「ちょっと柊ちゃん、つぐみちゃんをひとり占めしないで~」という玲香さんの声が耳に入ってきた。

 少々不満げに口を尖らせる彼女は、それぞれの仕事を交えた話題で盛り上がっている皆の中に私を引き込む。泉さんが言う〝気をつけたほうがいい人〟が誰なのか気になるも、それからは聞けずじまいだった。

 しかしCAやグランドスタッフの裏話はとても面白くて、いつの間にか私の興味はそちらへ移っている。

 もちろん泉さんの話も興味津々で、レアな管制塔でのエピソードには皆が聞き入っていた。